もうひとつ、気づいてしまったこともあった。 自分はビデオゲー ムが死ぬほど好きだし、それを作って稼げるだけのスキルもある。だが、 人生としてそれがベストではない、だ。 「もっとインパクトの大きい仕事がしたいと思いました」
「宇宙に出ていく以上に壮大な冒険はちょっと思いつきません。 火星に基地を作るのはものすご く難しいでしょうし、おそらくは途中で死ぬ人だって出てしまうでしょう。 米国に移民してきた 時代と同じように、です。 それでも、火星に行くと想像しただけで元気になれますし、いま、 世界はそういうことを必要としているのです」 課題を解決していくだけの人生などつまらない。 彼はそう感じていた。大いなる夢を追うことも必要だと。
「それがあればこそ、朝起きられるというものです」 ほかの惑星まで旅をする。それは人類の歴史にとって大きな一歩になるはずだ。
「ほんとうに画期的な出来事など、これまでほんのいくつかしかありません。 単細胞生物の誕生、多細胞生物の誕生、植物と動物の分岐、海から地上への進出、哺乳類意識の誕生くらいでしょうか。 そのくらいのスケールで次のステップとなれば、これはもうひとつしかないでしょう。 複数惑星に命を広げる、ですよ」
自分の努力を新時代を切り拓くほど重要なものだと考えてしまうあたり、すごいとも言えるし、 ちょっと心配だとも言える。 そのあたりをマックス・レプチンがうまく言い表している。
「自分のビジョンを天からの負託だとまわりに思わせられるのが、 イーロンのすごいところなんです」
「エンジンを試験するとか燃料タンクの認証を取るという話になると、マスクに「なぜやらなければならないんだ」と尋ねられるんですよ」とティム・ブザは言う。 ボーイングからの転職組で、 発射と試験を統括するバイスプレジデントになる人物だ。 「「それが要件だと軍の仕様で決まってるんです」って答えると、「それはだれが書いたんだ? どういう理屈でそうなってるんだ?」 って突っ込まれます」
要件は、すべて、勧告として扱え。それがマスクのやり方だ。疑う余地のない要件は、物理学の法則に規定されるものだけだ、と。
マスクが好きな言葉 好きな概念でもあるに「本気」がある。 Zip2では職場文化のあるべき姿をこの言葉で表現したし、それから30年近くも後、ツイッターの家族主義文化をひっくり返す際にもこの言葉を使っている。
・採用では心構えを重視すべし。 スキルは教えられる。 性根をたたき直すには脳移植が必要だ。
・気が狂いそうな切迫感をもって仕事をしろ。
・規則と言えるのは物理法則に規定されるものだけだ。それ以外はすべて勧告である。