Bryant Parkとは
【場所】ニューヨーク、マンハッタン中心部
【敷地面積】 150m×260m= 39000(m²)
【利用人数】 30000 人/1 日
荒廃していた1980年代
今でこそ多くの人に愛される公園となった Bryant Park だが、1980 年代は以下のような原 因から荒廃した公園であった。
- 木々が生い茂り、人目の届かない場所がある。
- 鉄格子で囲まれ、周りから孤立している。
- 行き止まりの歩道がある。
- 明確な動線が無く、気がつくと人目のない空間にいるというこが起こる。
- 周囲の歩道とのレベル差が1.2mあり、そのレベル差が公園を周囲から孤立させている。
- ドラッグディーラーや売春婦、ホームレスの溜まり場となっている。
Bryant Park の再生
1988年に、都市計画家のWilliam Whiteの分析を原案として、ランドスケープアーキテクトのHanna Olinが設計を行う。
そして1988 年から1992年にかけて公園を閉鎖し、4年にも及ぶ大規模な工事を実施。
生垣に囲まれていて道路から隔離された場所であった公園をであったのを、地面を掘り下げ、生垣を撤去。
公園と外の道路との見通しが良くなり公園の利用者に安心感を与えることができた。
Bryant Park のマネジメント体系
ニューヨーク市と共同でブライアントパーク管理監督主体BPRC(Bryant Park Restoration Corporation)を発足し、民間団体である BPMC(Bryant Park Management Corporation)が公園の運営を行う仕組み。
Bryant Park の主な収入源
- イベントの際の企業からの公園使用料/25%
コンサートやその他イベントを行う際の公園使用料 - 公園内のレストランからの賃料/25%
公園内にあるレストラン、カフェ、キオスクなどの出店料金。 - BID(Business Improvement District)/20%
- スポンサー料/20%
ベンチなどに企業の文字や宣伝を置くことができる。その際にスポンサー料を徴収する仕組み。
BID(Business Improvement District)とは
公園の周辺の街区、公園の眺望がある建物やオフィスのオーナーから、 ある程度のお金を集めて、それを公園の管理の費用に充てるシステム。
ブライアントパークでは、このビジネス改善地区の委員会をつくる時に、それぞれのビルの所有者や土地の地権者約 25 名を集めたBPRC を発足。
地権者や土地所有者から集められたお金(11 億円)は一旦ニューヨークに徴収され、再び ブライアントパークの管理費として戻ってくる仕組み。
1980 年代の後半から、ニューヨークの市内で、BID(ビジネス改善地区)を新しくつくると いう動きが起こってきたが、Bryant Park は BID を導入して成功した良い例。
BID の良さは、街をひとつの会社に見立て、投資・回収のサイクルを回す経営的手法にあり、今では ニューヨークの多くの場所に BID が導入されている。
公共から民間のへの業務委託
Bryant Park において、公共とはニューヨーク市とBID地区のビルオーナーらからなるブ ライアントパーク管理監督主体BPRC(Bryant Park Restoration Corporation)であり、民間とは BPMC(Bryant Park Management Corporation)である。
BPRC が BPMC に業務委託を行い、BPMC が実際の業務を行っているのである。公共の団体だけがやっているので はなく、公共と民間が一体となって、このブライアントパークのプロジェクトに取り組ん でいるということが非常に重要な点。
公共は必ずしも街を活性化させるノウハウを持っているわけではない。
そこで専門スキルを持つ民間に運営を委託する方がうまく運営できるのである。
日本における BID
日本でもBID を作ろうという動きがあるが、なぜ発展しないのか。
その理由の一つは、公 共と民間の分離ができていないからではないか。
公共が中途半端に監視するので、民間が思い切り動くことができない。大阪版 BID では、集めたお金の使い道は非収益事業に限るなどの制約があるが、公共が民間に思い切って全権を業務委託するのも一つの手ではないか。
もう一つは、補助金の存在。
利益を生まなくても赤字にはならないという意識があるせいで、本気で利益を生もうとしない。
本気で運営して本気で利益を生むために進む環境をつくること。いわゆる受益者負担が必要なのではないか。
会社を経営するように公園を運営する
まず注目したいのがBryant Parkの徹底したブランディング。
ブランディングとは、消費 者の潜在イメージに基づいた行動による効果という点で、非常に重要なものである。
Bryant Park においては、椅子、ベンチ、パラソル、ゴミ箱、その他あらゆるところに同じ字体で「BRYANT PARK」の文字が置かれている。
さらにネットショップを構え、服、食器その他 100 点以上のグッズを販売している。
その他メディアやイベントなどで多くの人の目に止まる。
Bryant Park を、公園を一つのブランドとして人々に認知させ、 人々の心にイメージとして蓄積させ、ブランドとしての価値を高めることに成功しているのである。
公園を1つのブランドとして運営することは珍しく斬新なことのように思えるが、これは非常に重要なことなのだ。
Bryant parkにおいて、ブランドとしての価値が高まることによってもたらされるメリット
1つは、公園の利用者数の増加。
公園の真の目的は、より多くの人に公園を利用してもらい、より多くの人を幸せにすること。
2つ目は、収益アップ。
イベント誘致の際のBryant Parkの競合は他のイベント会場であ る。企業はより多くの人に対してイベントを開催したい。ブランド価値が高く多くの人が集まりやすい Bryant Park に対して、企業は高額の公園使用料を支払う。
その結果 Bryant Park は多くの収入を得ることができるのである。
これはイベント誘致に限らず、ブランド価値が高まることでレストラン賃料、スポンサー料も上がり、多くの収入を得ることができる。
多くの収入を得ることで、公園の整備など、公園をよりよくすることに対して使うことのできるお金が増えるのである。
より多くの利益を得て、より多くの人を幸せにする。
会社にとってこのサイクルを回すことは非常に重要なのであるが、これは公園にとっても同じ ことなのである。
また、Bryant Parkが美化、活性化したため、周辺ビルの商業的価値が上がり、BPRCの 安定的な収入源になっている。
パブリックスペースを経営する
「経営」するという意識。これがパブリックスペースをマネジメントする上で一番大切だ と思う。
公園だから、道だからといって、なんとなく運営するのではなく、お金の生み方とお金の使い方をとことん考えること。
より多くの利益を生み、より良いパブリックスペ ースにするためにお金を使う。
利益を生むことは悪ではない。利益を生めば生むほど、より多くの人に、より良いサービスを提供できるのだから。
これはまちづくりにも当てはまる。