【No,98】やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

「才能」とは、努力によってスキルが上達する速さのこと。いっぽう「達成」は、習得したスキルを活用することによって表れる成果のことだ。

 

「才能」すなわち「スキルが上達する速さ」は、まちがいなく重要だ。

しかし両方の式を見ればわかるとおり、「努力」はひとつではなくふたつ入っている。

「スキル」は「努力」によって培われる。それと同時に、「スキル」は「努力」によって生産的になるのだ。

 

私たちは、新しいことを始めても長続きしないことが多い。しかし「やり抜く力」のある人にとっては、一日にどれだけ努力するかより、くる日もくる日も、目が覚めたとたんに「きょうもがんばろう」と気合いを入れ、トレッドミルに乗り続けることが重要なのだ。

 

「やり抜く力」というのは、ひとつの重要な目標に向かって、長年の努力を続けることだ。

さらに、ピート・キャロル風に言えば「人生哲学」と呼ぶべきその目標ほど、興味深く重要なことはほかにないため、生活時間の大半の活動は、その目標達成に向けて行われる。

「やり抜く力」が非常に強い人の場合、中位と下位の目標のほとんどは、何らかの形で最上位の目標と関連している。

それとは逆に、各目標がバラバラで関連性が低い場合は、「やり抜く力」が弱いと言える。

 

成功するには「やるべきこと」を絞り込むとともに、「やらないこと」を決める必要がある。なるほど、そのとおりだ。「やらないこと」をもっとしっかりと決めなければ。

 

コックスは4つの指標を「動機の持続性」と名付けた。
そのうちの2つは、グリット・スケールの「情熱」の項目にほぼ当てはまる。

〈遠くの目標を視野に入れて努力している(その日暮らしとは正反対の態度)。晩年への備えを怠らない。明確な目標に向かって努力している〉

〈いったん取り組んだことは気まぐれにやめない。気分転換に目新しさを求めて新しいものに飛びつかない〉

 

残りの2つは、グリット・スケールの「粘り強さ」の項目にほぼ当てはまる。

〈意志力の強さ、粘り強さ。いったん目標を決めたら守り抜こうと心に誓っている〉

〈障害にぶつかっても、あきらめずに取り組む。粘り強さ、根気強さ、辛抱強さ〉

 

総括として、コックスはつぎのように結論を述べている。
「知能のレベルは最高ではなくても、最大限の粘り強さを発揮して努力する人は、知能のレベルが最高に高くてもあまり粘り強く努力しない人より、はるかに偉大な功績を収める」

 

1.〈興味〉自分のやっていることを心から楽しんでこそ「情熱」が生まれる。

私がインタビューをした人びとはいずれも、自分の仕事のなかで、あまり楽しいとは思えない部分をはっきりと認識しており、多くの人はちっとも楽しいと思えないことも、少なからず我慢していた。
とはいえ全体的には、目標に向かって努力することに喜びや意義を感じていた。
だからこそ彼らは、尽きせぬ興味と子どものような好奇心をもって「この仕事が大好きだ」と言う。

 

2.〈練習〉「粘り強さ」のひとつの表れは、「きのうよりも上手になるように」と、日々の努力を怠らないことだ。

だからこそ、ひとつの分野に深く興味を持ったら、わき目もふらずに打ち込んで、自分のスキルを上回る目標を設定してはそれをクリアする「練習」に励む必要がある。
自分の弱点をはっきりと認識し、それを克服するための努力を日々繰り返し、何年も続けなければならない。
また、「やり抜く力」が強いということは、慢心しないことでもある。
分野を問わず、どれほど道を究めていても、「やり抜く力」の鉄人たちは、まるで決まり文句のように「なにが何でも、もっとうまくなりたい!」と口にする。

 

3.〈目的〉自分の仕事は重要だと確信してこそ、「情熱」が実を結ぶ

目的意識を感じないものに、興味を一生持ち続けるのは難しい。
だからこそ、自分の仕事は個人的に面白いだけでなく、ほかの人びとのためにも役立つと思えることが絶対に必要だ。
なかには早くから目的意識に目覚める人もいるが、多くの場合は、ひとつのことに興味を持ち続け、何年も鍛錬を重ねたのちに、「人の役に立ちたい」という意識が強くなるようだ。
「やり抜く力」の鉄人のなかでも、成熟をきわめた人たちは、みな口を揃えて同じことを言った。
「私の仕事は重要です。個人的にも、世の中にとっても」

 

4.〈希望〉希望は困難に立ち向かうための「粘り強さ」だ。

本書では、興味、練習、目的のあとに希望を採り上げるが、希望は「やり抜く力」の最終段階だけでなく、あらゆる段階に欠かせない。
最初の一歩を踏み出すときからやり遂げるときまで、ときには困難にぶつかり、不安になっても、ひたすら自分の道を歩み続ける姿勢は、はかり知れないほど重要だ。
私たちはときに大小さまざまな挫折を経験して、打ちのめされる。打ちのめされたままでは「やり抜く力」も失われてしまうが、立ち上がれば、「やり抜く力」を発揮することができる。

 

第一に、「やり抜く力」は伸ばせるということ。
それにはふたつの方法がある。

ひとつは、「やり抜く力」を自分自身で「内側から伸ばす」方法。
具体的には、
「興味を掘り下げる」
「自分のスキルを上回る目標を設定してはそれをクリアする練習を習慣化する」
「自分の取り組んでいることが、自分よりも大きな目的とつながっていることを意識する」
「絶望的な状況でも希望を持つことを学ぶ」などの方法がある。

 

もうひとつは、「外側から伸ばす」方法だ。
親、コーチ、教師、上司、メンター、友人など、周りの人びとが、個人の「やり抜く力」を伸ばすために重要な役目を果たす。